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柿渋座はじめ〼

柿渋座ポスタ

この夏、小国町の坂本善三美術館で開催される「柿渋座」という展覧会に参加します。展覧会とはいっても何か作品を展示する訳ではなく、「柿渋を作る・塗る・染める」に参加して体験して頂く、もしくはその状況と空間全体を作品と捉えて鑑賞して頂くことになります。(「柿渋」という身近に使える技術を習得して頂ける良い機会ですので参加して頂くほうが断然オススメです!)

そもそも、140年以上前の古民家を移築して建てられた坂本善三美術館の壁には「柿渋」が塗られており、定期的なメンテナンスが必須でありました。ここは、手間ひまかけてメンテナンスする機会を与えてくれたと理解して、積極的に建物に関わって愛着を育てていくチャンスなのです。

懐古主義者ではありませんが、求めたいのは一昔前の昭和のあれ。そうです。年配者が幸せそうに語るあの世界。身近でローテクな技術や素材を用いて、ご近所のみんなで建築を作っていた世界。建築のプロと素人の境界、はたまた建築と美術を横断した幸せな領域に立ち入りたいと思います。

参加は無料、参加できる回だけの参加でもOKです。多くの参加者のみなさんと愉しい時間を共有したいと思います。ぜひご参加くださいませ。

 


「柿渋座」

第1回:ユニフォーム作り
2018年6月17日(日)午前10時~12時
染めたい服(ノリ抜きした白系の植物繊維が染まりやすい)を柿渋で染めます。柿渋作業は汚れ・シミを伴いますので、次回以降のユニフォームにしてもらうと良いです。Tシャツ、エプロン、手ぬぐいなどなどお好みのアイテムを染めてください。

第2回:柿渋塗り その1
2018年7月22日(日)午後1時~4時
坂本善三美術館の外壁に柿渋を塗ります。古い塗装を布で拭き取って、新しく柿渋を塗り重ねます。小さいお子さんは取り外した雨戸などを、大人の方には高いところなどを塗って頂く予定です。

第3回:柿渋採取&柿渋作り
2018年8月12日(日)午前10時~午後3時
まだ未熟な青い渋柿を採って、柿渋を作ります。これで本当に出来るの?というぐらいシンプルな作業です。実は、1年前に作った柿渋が坂本善三美術館のどこかに貯蔵されています。お昼をまたいだ1日作業です。お弁当をお忘れなく。

第4回:柿渋塗り その2
2018年8月26日(日)午後1時~4時
前回の続きを塗ります。前回も経験された方は自慢げにご指導ご協力お願いします。暑くても直射日光に当たらないように工夫しますのでめげずにご参加ください。

第5回:柿渋塗り その3
2018年9月29日(土)午前10時~午後4時
柿渋塗りの最終回です。どこまで仕上がるかは参加者のみなさんの腕にかかっています。最後はみんなでごはんを囲みたいと思います。ビール!ビール!

問い合わせ&会場:
坂本善三美術館
熊本県阿蘇郡小国町黒渕2877
0967-46-5732
http://sakamotozenzo.com/

「柿渋座」Facebookページ
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そして3年目へ

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今日でたねもしかけもという活動を始めてから2年が経ちました。

建築にまつわることを地域の人々と会話しながら頭で考え手足を動かし、阿蘇小国のこの土地でなにが出来るのか模索する楽しい日々でした。
有難いことに良い縁にも恵まれまして1万人程の小国エリアに限定してお仕事させて頂くことができています。

いま、0.5坪ほどのとても小さな建築に取り組んでいます。きっと世界一小さな建築ですが、万人に広く開かれています。私たちを取り巻く土地の風景は、長年の暮らしのなかで伝統的に行われてきた無意識のしきたりやふるまいの積み重ねで成立しています。その風景に参加するための最適解はなんなのか、そんなことを思考しながら進めています。

3年目も、広く普遍的なテーマを身近な環境で地道に実行していきたいと思います。どうぞ今後とも宜しくお願いします。

森からはじまる家

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3匹のこぶたはそれぞれワラ、枝、レンガで家を作りました。その理由はそこに素材が有ったからというごく自然な選択でした。私も沖縄ではコンクリート、インドではレンガで作る経験をしました。

私の住む阿蘇小国町には良質な杉が豊富にあります。住民の方も杉に慣れ親しんで、自然な選択で小国の杉を使って家を作ります。今回、その自然な流れで(とはいえ普通ではなかなかない貴重なご縁です)、家に使う木材をお施主さんと山から切り出す体験をしました。当日、山に集合したのは、お施主さんをはじめ、山の管理から伐採~出荷を担う森林組合さん、製材加工をされる製材所さん、そして設計者の私。みなさんのお子さん同士が同級生という引きつけの法則!により実現しました。

70年を超える成木に楔が打たれ、ゆっくりとスローモーションの様に倒れ、大地と空気を震わせるあの伐採シーンには心が痺れます。ありがとう大切に使わせて頂きますと、そういう気持ちが自然と湧き出るのです。この日伐採して頂いた木材は部屋の中心的な柱と、台所の天板に使うことになりました。家族の集まる場所で思い出とともに大切にされることと思います。

今日も町内のどこかでこの伐採シーンが起こっています。機会があれば身近な環境で実体験することも出来ます。その体験はじんわりと余韻が残り、その後の生活での選択に良い影響を与えてくれることでしょう。日本中に広がる山に対する環境意識も、身近な裏山から感じ取ることで始まります。このような良い機会に関ることが出来てありがたく思います。

小国は今日も雪だった

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ちょうど4年前の今日、今住んでいる阿蘇小国に引っ越してきました。
初日は唯一の知り合いと一緒に薪ストーブを設置して暖をとり、アウターを着込んで寝袋で震えながら眠りました。完全に寒さをなめてた。。。巷で騒がれている高気密高断熱とは真っ向から逆走している隙間だらけでぺらんぺらんの我が家を如何に投資せず暖かくするか、そんなことばかりやっているうちに4年が過ぎ、5回目の冬を雪と共に過ごしています。

去年の今頃感じていた「弥生へ」というテーマがいよいよ現実味を帯びてきていて、ついに稲作の世界が開けようとしています。これはずっと思い描いてきたことで、諸先輩方の知恵を拝借しながら本気で臨みたいと思っています。生き生きと暮らしていくことができる環境を、自分たちとその身近な身の回りの循環の中で整えていくことがもっぱらの取り組みでございます。寒さの先にあるあの春のほころびまで、さあさあ準備をすすめてまいりましょう。

土地に発見する

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小国町出身の画家・坂本善三さんの作品を所蔵・展示する坂本善三美術館で、「コレクションリーディング」という企画があり、「床A」というプロジェクトで参加させて頂きました。善三さんがヨーロッパで建築物を見て、水平垂直の構成に感動し描かれたという「壁A」という油絵の作品に対する私のレスポンスです。

このプロジェクトでは、座ってくつろいで鑑賞することが出来るものを、近隣の日常生活に既にある要素で構成することをテーマとしました。町内のくつろぎの空間をきょろきょろと探す日々でした。会期が近づいたある朝、近所を散歩していた時に発見したのがこの三輪車です。この三輪車は農家さんがサツマイモの苗を植え付けるときに使う農具として自作されました。苗を乗せて、椅子に座って畝にまたがり、楽な姿勢で作業できるよう、必要に応じて工夫が凝らされた最適な道具です。ですが、見慣れぬ姿に驚きと、座った時の楽しさを与えてくれます。

今回私は新たにつくっていません。ただただ磨いてお化粧して善三さんの絵の前に置きました。最大の敬意を持って、土地に発見するということをしました。日常の延長線上のとても楽しいプロジェクトでした。

今回プロデュースとアドバイス頂きました美術家の藤浩志さんと、きっかけをくださいました学芸員の山下さん、サポート頂きましたそして美術館スタッフのみなさま、そして一緒にそれぞれのプロジェクトで参加されたメンバーのみなさま、どうもありがとうございました。ゆるやかな作品が多く楽しめる展示になっております。お近くの方は是非どうぞ足を運ばれてください。


藤浩志と小国び塾が作る善三展
「こんな解釈ありなんだ!」

会期: 2017年9月16日―11月26日
会場: 坂本善三美術館
熊本県阿蘇郡小国町黒縁2877
ブログ:小国び塾活動日誌