時間と建築

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先日、熊本現代美術館で開催中の「ジブリの建造物展」に行ってきました。この企画は歴代ジブリ作品に登場する建造物を立体再現し、舞台の時代背景や生活環境を紐解いてみようというもの。ジブリ好きな娘の興奮ぶりにも負けず劣らずハマる父、すっかり時間を忘れて親子で夢中になれた良い展示でした。
特に建築史家・藤森照信さんによる解説が素晴らしく、日本本来の和的なものを「無意識」と定義して、洋館のような外来のものを異質なものとして「意識」的に表現したのではないかと。例えば「トトロ」のなかでトトロやマックロクロスケのような妖的なものは、無意識の時空間に住み着いた日本人の記憶のようなものとして、縁の下や五右衛門風呂に現れる。一方、メイとサツキのお父さんが研究する考古学は明治以降近代の学問で、書斎の部屋のみ洋館風に増築されている。他の作品でも和洋織り交ぜたり、時代背景を歪ませたりと、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界観をジブリは意識的に作り出したのだと藤森さんは解説している(はず)。その歴史・文化に対する洞察力とうんちくの量をまえに、もし生まれ変わったら建築史を一から学ぼうと心底思うのでした。

藤森さんといえばユーモラスな建築で知られてます。最寄りにある大分県竹田の「ラムネ温泉館」を訪ねた時の事です。こちらもユーモラスな外観と自然素材を使い、非常にフレンドリーな建築なのですが、特に湯船が素晴らしかった。それはオープンから10年とは思えないほど古びて使い込まれた感じのするものでした。黄土色に変色し丸みを帯びた漆喰の湯船に浸かると、昔からそこにあった秘湯に入ったような感覚。藤森さんは意識的に時間を味方につけて、無意識の空間を作っているのだと理解しました。藤森さんの友人達で構成される「縄文建築団」というセルフビルド集団と一緒に内外装仕上げ作業することも、不完全さによるズレ・歪み・手直しといった一見長い年月を経たかのような時間のいたずらを内包するねらいがあったのかもしれません。

スタジオムンバイの建築家ビジョイ・ジェインも同じような思想を持っていました。敷地の境界に人の背丈ぐらいの石積みの壁を作るときに、コンクリートを使わず土を詰め積み上げろと言います。モンスーンの時期でしたので次の日には崩れ、積み上げてはまた崩れ、同じことの繰り返しの様ですが、徐々にきちんと強く積み上がり、隙間には植物が根を張り始めました。完成するころには随分古くからそこにあるようなものになりました。今でも崩れては積み上げを繰り返して一層遺跡のようになっていることでしょう。

伸び縮みする時間をどのように扱って建築に内包するか、面白いテーマです。

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