山鳥の森オートキャンプ場 山鳥の湯

令和2年7月豪雨により被災したキャンプ場の復興プロジェクトである。天然温泉を利用した温浴施設を再建するにあたり、地場材である小国杉を構造体および仕上げに使用した。アウトドアを楽しみに来たキャンパー達がこの建築を通してさらに自然を体感し、いずれは自然に同化して環境の一部となる建築を目指した。

温泉施設の防腐対策として立上げた基礎コンクリートの外部仕上げに、樹皮の付いた杉丸太背板を化粧型枠とする「樹皮コン」を新たに開発した。木肌や節の色形を転写することで自然環境と呼応する有機的な意匠とした。

今回開発した「樹皮コン」は、製材時の副産物として発生する樹皮の付いた背板を活用している。背板は成長過程で木肌や節などの個体差が生じ、豊かな表情を備えた素材である一方、不均一で施工性に難のある部材のため一般建築材としてはあまり流通されず、通常バイオマス燃料のためチップにされている。地場の製材所と活用検討するなかで、副産物の板幅・板厚のバラツキを許容することで建築意匠にもランダムさが生まれるなど双方のメリットが一致した。温泉の腐食に耐候する素材として立ち上げたコンクリートの外部仕上げを「樹皮コン」とし、機能と意匠を両立させた。成果物は木そのものでは無いが木のデザインの可能性を拡げることを試みた。

使用する背板は、製材所での幅合わせ加工のみに留め、追加の作業負担を減らしている。未加工品の背板に対して材料単価が3倍になり、新たな付加価値が生まれた。消費者からしても一般化粧板より安価で購入できる。全国の製材所で副産物として発生している背板の活用に対応できる事例である。